彼の点と私の点。
結局距離は変わっていない。
居場所の物理的な距離は少し開いた。
笑っているような、泣いているような、曖昧なお面をつけて会いに行った。
これ以上一緒に居ると迷惑がかかるからもっと離れようと言われた。
緑の生き生きと広がる公園を歩いていたから、不幸を語るにはあまりにも不釣合いな話で、少し笑った。子供の嬉しい悲鳴が空に吸い込まれていく。
「ちゃんちゃらおかしいね」
という普段使わない言葉を使って答えた。
会わない時間と会えるまでの距離が変わっても、別に私のあなたに対する感情のあり方は変わらない。あなたがあなたである限りは。
考え方も心のあり方も、根本のところでは何も変わっていないのが良くわかった。
心の根から腐ってしまったら、あなたを見続ける気はないのだけれど。
一生懸命自分同士がせめぎあって、足りない考えを補おうとしているから、そんなに思いつめなくても大丈夫だよ、と心の中で思った。
私と彼の間には無限の数が詰まっているけれど、絶対的な距離は変わらない。
数直線に潜む無限の話をしたら、「初めて知ったときは感じるものがあった気もしたけど今更そんなこと特別に思い出したりしなかった」と言っていた。
彼は私の何倍も数学が出来るけど、感慨にふけることは無いようだ。
結局距離は変わっていない。
居場所の物理的な距離は少し開いた。
笑っているような、泣いているような、曖昧なお面をつけて会いに行った。
これ以上一緒に居ると迷惑がかかるからもっと離れようと言われた。
緑の生き生きと広がる公園を歩いていたから、不幸を語るにはあまりにも不釣合いな話で、少し笑った。子供の嬉しい悲鳴が空に吸い込まれていく。
「ちゃんちゃらおかしいね」
という普段使わない言葉を使って答えた。
会わない時間と会えるまでの距離が変わっても、別に私のあなたに対する感情のあり方は変わらない。あなたがあなたである限りは。
考え方も心のあり方も、根本のところでは何も変わっていないのが良くわかった。
心の根から腐ってしまったら、あなたを見続ける気はないのだけれど。
一生懸命自分同士がせめぎあって、足りない考えを補おうとしているから、そんなに思いつめなくても大丈夫だよ、と心の中で思った。
私と彼の間には無限の数が詰まっているけれど、絶対的な距離は変わらない。
数直線に潜む無限の話をしたら、「初めて知ったときは感じるものがあった気もしたけど今更そんなこと特別に思い出したりしなかった」と言っていた。
彼は私の何倍も数学が出来るけど、感慨にふけることは無いようだ。
例えば心を強くするなら、自分と似た境遇、自分と似た思想、自分と似た志を共有できる人たちと朝まで語り明かして、自分は一人じゃないと思い込むことは、短期的に有効かもしれない。
いくら言葉を重ねても、時間を共有しても、人は必ず孤独であることを認めることは弱さを認めることと同じだろうか。
誰かに傍にいてほしいと思うことは、夢の語り場を求めているに過ぎないのかもしれない。
共に在ることが叶わない今、簡単な欲望の形すらはっきりと見えなくなってしまった。誰かと一緒に居たいと願うことが、浅ましいことのようにも思える。つまりはきっと、それが相手を大事にすることよりも自分の為に居てほしいと望む気持ちのほうが強く感じられるからなのだろう。相手が見えなければ尚更で、寂しさは自分の内側でしか生まれないものだと思う。
皮膚が他人を求めるよりももっと根深く、胃が他人を欲しているのである。誰かが傍にいることで、自分が何かを得るために。
いくら言葉を重ねても、時間を共有しても、人は必ず孤独であることを認めることは弱さを認めることと同じだろうか。
誰かに傍にいてほしいと思うことは、夢の語り場を求めているに過ぎないのかもしれない。
共に在ることが叶わない今、簡単な欲望の形すらはっきりと見えなくなってしまった。誰かと一緒に居たいと願うことが、浅ましいことのようにも思える。つまりはきっと、それが相手を大事にすることよりも自分の為に居てほしいと望む気持ちのほうが強く感じられるからなのだろう。相手が見えなければ尚更で、寂しさは自分の内側でしか生まれないものだと思う。
皮膚が他人を求めるよりももっと根深く、胃が他人を欲しているのである。誰かが傍にいることで、自分が何かを得るために。
まだまぶたの奥に紗幕がかかっていた、子供時代の終わりごろ。
彼女に出会った。
私が抱えいる矛先の無い悲しみを見て、彼女は泣いた。私が一頻り泣いて、気が済んで、落ち着きを取り戻した後に、彼女が音も立てずに泣く。私はしゃべりすぎだったし、彼女はちっとも言葉を扱わなかった。それが募ると険悪になる。でもひと時も離れようとしなかった。ぴったりと肩を寄せ合って、同じリズムで呼吸をしていた。よく二人で黒猫の背中を撫ぜた。
だから、長くは続かない。
そうやって同じことを繰り返すうちに、予想を裏切らず、臨界点に達して。
二人は弾け飛ぶように、離れた。女の子同士の友人関係という枠組みでは捉えきれない何かがあった。後にも先にも、ほかの誰であっても、あの状態を再現することは出来ないだろう。あの時の、あの場所の自分はもう居ない。
引きちぎっておきながら、それでも彼女を命の限り見守ると誓った。単純に、余計なおせっかい。よっぽどのことが無い限り、彼女の世界にもう割り入ることは、必要ないしするまいと思っていた。彼女の人生自体のハッピーエンドに私は関われない。だとしても、それ以外の結末を許せないのだ。どうにか視界には入るぎりぎりのところに腰を落ち着けた。猫を抱えて座り込む。何かあれば、猛烈に走ってみせる、という気持ちで。
ふと、気づくと転々と続く黒猫の足跡。あたりに姿は無い。挨拶もせずに去った後なのだ。
限定条件の多い予感は当たる。
彼女がパノラマの向こうで倒れた。
本当に言葉通り、猛烈に走った。全身の皮膚がざわついて、血液が炭酸水のように騒がしくなった。
私は間に合った。だから、彼女は砕けなかった。
多少なら守ることは出来る。
でも、結局彼女が一生抱えることになる、重い傷から救い出すことは出来ない。どこまでも無力であることを、思い知らされている。
それは当然のことだ、と理解できる。だとしても自分が情けない。
黒猫はちっとも戻らない。
彼女に出会った。
私が抱えいる矛先の無い悲しみを見て、彼女は泣いた。私が一頻り泣いて、気が済んで、落ち着きを取り戻した後に、彼女が音も立てずに泣く。私はしゃべりすぎだったし、彼女はちっとも言葉を扱わなかった。それが募ると険悪になる。でもひと時も離れようとしなかった。ぴったりと肩を寄せ合って、同じリズムで呼吸をしていた。よく二人で黒猫の背中を撫ぜた。
だから、長くは続かない。
そうやって同じことを繰り返すうちに、予想を裏切らず、臨界点に達して。
二人は弾け飛ぶように、離れた。女の子同士の友人関係という枠組みでは捉えきれない何かがあった。後にも先にも、ほかの誰であっても、あの状態を再現することは出来ないだろう。あの時の、あの場所の自分はもう居ない。
引きちぎっておきながら、それでも彼女を命の限り見守ると誓った。単純に、余計なおせっかい。よっぽどのことが無い限り、彼女の世界にもう割り入ることは、必要ないしするまいと思っていた。彼女の人生自体のハッピーエンドに私は関われない。だとしても、それ以外の結末を許せないのだ。どうにか視界には入るぎりぎりのところに腰を落ち着けた。猫を抱えて座り込む。何かあれば、猛烈に走ってみせる、という気持ちで。
ふと、気づくと転々と続く黒猫の足跡。あたりに姿は無い。挨拶もせずに去った後なのだ。
限定条件の多い予感は当たる。
彼女がパノラマの向こうで倒れた。
本当に言葉通り、猛烈に走った。全身の皮膚がざわついて、血液が炭酸水のように騒がしくなった。
私は間に合った。だから、彼女は砕けなかった。
多少なら守ることは出来る。
でも、結局彼女が一生抱えることになる、重い傷から救い出すことは出来ない。どこまでも無力であることを、思い知らされている。
それは当然のことだ、と理解できる。だとしても自分が情けない。
黒猫はちっとも戻らない。
何事も、勝手に快方へ向かうことなんて無い
風邪のウイルスと戦う自分の細胞たちを一つ一つ意識するように
少しずつ少しずつ
言葉を重ねていく
それは薄皮一枚の攻防
少なくとも悪い方向にばかり進んでいるわけじゃない
少しずつ、アップダウンを繰り返しながらも
手繰り寄せる意識
突き放す体
温度を伝える、というのは
恋だの愛だの言っていられない
地獄に落ちていく感覚を共有した二人は
いまだに離れることが出来ない
今も二人きりでいる
心地よいわけが無い
全く同じ訳ではないから
しかし、何かが違うわけでもない
離れられない
混ざり合わない 二人きり
ひとつの様になってしまった二人を引き剥がして
あまりにも違う落差に失望しないうちに
少し距離を縮めて
個々の体温を伝え合う
別々であることの確認
それによって初めて
二人は、二人になれる
一人と一人が再び出会った
その喜びを 取り戻せる気がしてきた。
風邪のウイルスと戦う自分の細胞たちを一つ一つ意識するように
少しずつ少しずつ
言葉を重ねていく
それは薄皮一枚の攻防
少なくとも悪い方向にばかり進んでいるわけじゃない
少しずつ、アップダウンを繰り返しながらも
手繰り寄せる意識
突き放す体
温度を伝える、というのは
恋だの愛だの言っていられない
地獄に落ちていく感覚を共有した二人は
いまだに離れることが出来ない
今も二人きりでいる
心地よいわけが無い
全く同じ訳ではないから
しかし、何かが違うわけでもない
離れられない
混ざり合わない 二人きり
ひとつの様になってしまった二人を引き剥がして
あまりにも違う落差に失望しないうちに
少し距離を縮めて
個々の体温を伝え合う
別々であることの確認
それによって初めて
二人は、二人になれる
一人と一人が再び出会った
その喜びを 取り戻せる気がしてきた。
人は天体のように孤独だ、と言い続けてきた。
そして孤独が悪ではないことも信じてきた。
でも、どうしても、うるさいくらいの静寂に耐えられなくなることがある。そのために、略奪を繰り返す。つまり、静寂を潰すためだけに、誰かを捕獲する。そして逃げられないように、誰にも取られないように、傷つける。杭を打って固定する。言葉の羅列によって嘘を真実にすりかえる。
それは、とても孤独を肯定した人間の心のあり方であるとは思えない。
自分の醜さが鏡に映ってしまって、目が離せなくて、身動きが取れないままでいる。
そして孤独が悪ではないことも信じてきた。
でも、どうしても、うるさいくらいの静寂に耐えられなくなることがある。そのために、略奪を繰り返す。つまり、静寂を潰すためだけに、誰かを捕獲する。そして逃げられないように、誰にも取られないように、傷つける。杭を打って固定する。言葉の羅列によって嘘を真実にすりかえる。
それは、とても孤独を肯定した人間の心のあり方であるとは思えない。
自分の醜さが鏡に映ってしまって、目が離せなくて、身動きが取れないままでいる。
Sweet Romance
2006年9月16日 神経細胞至上の境界線を越えられるのなら。
カードには異常って書いてあるけど。
意味としては至上のほうが近いのでは? ねえ、xxxさん。
元々会話なんてしたこと殆ど無いけど、心の中では話しかけて仕舞う。
大好きだけれど、依存なんてとんでもない。
むしろ反発していたのかもしれない。
あなたの存在は、少し距離を置いたところから感じていたように思う。
あなたを失ったことで得たものは、大きい。
あなたの不在が、一つの世界を大きく変えたことは確かだ。
風が冷えてくると決まってやってくる。私の気持ちは季節と共に巡っている。
あなたに付き従ったことは無い。
なのに、あなたの言葉や旋律は頭の中に染み付いている。
それは、あなたを失った者たち全てに共通する感覚なのだろう。
今でも月を眺めては、幼いままであられるあなたのことを思い描いています。
幼いままに終わるために、不在を残すためにあなたが在ったわけではないと思いたい。なにかの目的のために、命が存在するなどということはありえないから。
あなたのことを共に語る相手がいない。
それがこの辛さなのだ。
わたしはあなたと向き合う時こんなにも孤独だったろうか。
あなたの音楽を殺さない。悲しくて聴けない、などとは言わない。
あなたと向き合うにはとても力が要る。
でも、聴く。
不在を認識するために。
そして、あなたを絶やさないために。
カードには異常って書いてあるけど。
意味としては至上のほうが近いのでは? ねえ、xxxさん。
元々会話なんてしたこと殆ど無いけど、心の中では話しかけて仕舞う。
大好きだけれど、依存なんてとんでもない。
むしろ反発していたのかもしれない。
あなたの存在は、少し距離を置いたところから感じていたように思う。
あなたを失ったことで得たものは、大きい。
あなたの不在が、一つの世界を大きく変えたことは確かだ。
風が冷えてくると決まってやってくる。私の気持ちは季節と共に巡っている。
あなたに付き従ったことは無い。
なのに、あなたの言葉や旋律は頭の中に染み付いている。
それは、あなたを失った者たち全てに共通する感覚なのだろう。
今でも月を眺めては、幼いままであられるあなたのことを思い描いています。
幼いままに終わるために、不在を残すためにあなたが在ったわけではないと思いたい。なにかの目的のために、命が存在するなどということはありえないから。
あなたのことを共に語る相手がいない。
それがこの辛さなのだ。
わたしはあなたと向き合う時こんなにも孤独だったろうか。
あなたの音楽を殺さない。悲しくて聴けない、などとは言わない。
あなたと向き合うにはとても力が要る。
でも、聴く。
不在を認識するために。
そして、あなたを絶やさないために。
奈落の底へ、どんと背中を押して
全て引きちぎってあげようか
一瞬だけ、残酷な笑顔になる。
思い直して、考えをすぐに改めるけど、限界なのは判っている。
終わりを告げる鐘が鳴り響けば、あっけなく終われる所まで来ているのに。
鳴らない。
じりじりする。
終わって欲しいのか
終わって欲しくないのか
自分の思い通りにならないなら、終わればいいのに。
結局はそういう、大人の悪い考えなのだ。
子供にはそのような悪さは無い。
子供はもっと素直にストレートな邪悪さを持っている。
人を悪く思うとき、子供心を取り戻したいと思う。
全て引きちぎってあげようか
一瞬だけ、残酷な笑顔になる。
思い直して、考えをすぐに改めるけど、限界なのは判っている。
終わりを告げる鐘が鳴り響けば、あっけなく終われる所まで来ているのに。
鳴らない。
じりじりする。
終わって欲しいのか
終わって欲しくないのか
自分の思い通りにならないなら、終わればいいのに。
結局はそういう、大人の悪い考えなのだ。
子供にはそのような悪さは無い。
子供はもっと素直にストレートな邪悪さを持っている。
人を悪く思うとき、子供心を取り戻したいと思う。
死に至る病でないと、特効薬はすぐに開発されることは無いらしい。
死にたがる病は…
心の問題なのか。
体の問題なのか。
たまに判らなくなる。
ずっと心の問題だと思っていたんだけれど。何だか違うような気がする。頭の中が悲壮惨憺たる淀みで満たされていても、意志に反してごく普通に、健康に振舞っている時がある。
逆に心はとても元気で何より、留まって居たくない、突き進みたい時に限って体が硬直してしまう時がある。
後者の方が困る。
なんというか、歯がゆいだけでなく、自分でせっかく築いてきた社会生活そのものが崩壊する危険がある。それは二度と取り戻せないものになってしまう可能性があるので本当に怖い。
しかも、定期的にやってくる。
これに関する特効薬は無いものか。
あったとしても、いくらお金を出しても買えそうに無いことが、絶望の一つである。
死にたがる病は…
心の問題なのか。
体の問題なのか。
たまに判らなくなる。
ずっと心の問題だと思っていたんだけれど。何だか違うような気がする。頭の中が悲壮惨憺たる淀みで満たされていても、意志に反してごく普通に、健康に振舞っている時がある。
逆に心はとても元気で何より、留まって居たくない、突き進みたい時に限って体が硬直してしまう時がある。
後者の方が困る。
なんというか、歯がゆいだけでなく、自分でせっかく築いてきた社会生活そのものが崩壊する危険がある。それは二度と取り戻せないものになってしまう可能性があるので本当に怖い。
しかも、定期的にやってくる。
これに関する特効薬は無いものか。
あったとしても、いくらお金を出しても買えそうに無いことが、絶望の一つである。
体に閉じ込められた自分が可哀想な気がする。
生命活動を行う器に行動や思考が制限されることが多すぎる。
これは深く議論しようと思うと、きっといろいろ文献にあたったりしなければならないだろうから追求したくない話題。
だから、印象のお話。
全く、私の体は不良品なのでしょうか。
コンスタントに、ペースを崩さず物事をこなせることは才能だと思っていた。でも、それ以上に、生命の安定感即ち健康というものが大きい気がする。
健康かどうかは大した問題ではないと考えていた。
器に左右されるほどの脆弱さならば、それは大きな問題だと思う。多少の体調不良は気にしていられない。無視できないほどに崩れる頻度が高いことが、何より不満。
西洋医学のお医者様は必ず「体質だから仕方ありません、上手に付き合いましょう」と仰る。根本的な解決方法は何処にあるのか。決して死に至ることは無い。でも日常に支障をきたすレベル。このラインの病は医者も丸投げ、研究も進まないらしい。
いっそ、蓬莱でも探しに行きたい気分である。亀、迎えに来ないかな。
生命活動を行う器に行動や思考が制限されることが多すぎる。
これは深く議論しようと思うと、きっといろいろ文献にあたったりしなければならないだろうから追求したくない話題。
だから、印象のお話。
全く、私の体は不良品なのでしょうか。
コンスタントに、ペースを崩さず物事をこなせることは才能だと思っていた。でも、それ以上に、生命の安定感即ち健康というものが大きい気がする。
健康かどうかは大した問題ではないと考えていた。
器に左右されるほどの脆弱さならば、それは大きな問題だと思う。多少の体調不良は気にしていられない。無視できないほどに崩れる頻度が高いことが、何より不満。
西洋医学のお医者様は必ず「体質だから仕方ありません、上手に付き合いましょう」と仰る。根本的な解決方法は何処にあるのか。決して死に至ることは無い。でも日常に支障をきたすレベル。このラインの病は医者も丸投げ、研究も進まないらしい。
いっそ、蓬莱でも探しに行きたい気分である。亀、迎えに来ないかな。